- 思ったとおりにいかない子育ては、「大変だなあ」と、感じる反面、
成長を垣間見た時の喜びもまたひとしおですよね。
- 私は眼科専門医ですが、3人の子供の父でもあります。同じように育てているつもりなのに、3人とも性格がぜんぜん違うのは本当に不思議ですね。診察をしていてもさまざまな子供に出会います。元気な子、おとなしい子、怖がりな子、好奇心旺盛な子などいろいろです。
元来の性格による違いもさることながら、小さい幼児は大人の想像のつかないところで不機嫌になってしまったり、泣き出したり、みごとに我われ大人を困らせてくれますよね。(笑)
病院にかかるときなどは特に大変です。「こわい!」とか「いやだ!」と感じたら最後、泣き叫んでしまって診察や治療など受けようとはしてくれません。
でもそこには子供たちなりの理屈があったりもします。“こわい”とか“いやだ”と感じるだけの理由がそこには必ずあるのです。それらを否定して無理やり受診させるのではなく、子供の立場で考えて“こわい理由”や“いやな理由”を排除することを試みることが大切です。
- だって、想像してみてください。
- せまい診察室。はじめてみる診察器具。座りなれない丸椅子。白衣を着た知らない医師や看護師。ほのかに香る薬品の香り・・・何をされるかわかったものじゃありません!さらに直前に診察を受けた子の“泣き叫ぶ声”など聞いてしまっていたら、もう完璧です。
「ここ(病院)は、絶対、私にコワイことをする場所だ!」そう考えて当然ではないでしょうか?だからといって診察や治療をやめるわけにもいきません。ですから、私たちは診察するお子様の気持ちや様子をうけとめ、一人ひとりにあった診察方法や治療方法を選択するようにこころがけています。
診察室が怖いなら、キッズスペースで診察することもしますし、医師や看護師がこわいなら、一緒にふれあって遊ぶことからはじめたりもします。
- 「どうしてそこまでするんですか?」と、
他医院の医師にたずねられたことがあります。
- 逆に質問したいです。「どうしてやらないのですか?」と。
子供の目の異常を放置してしまったら、取り返しのつかないことになります。特に3歳までの視力がもっとも発達する時期に、“ものをしっかりと見る経験”をできなかった子供は、弱視になり、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても、十分な視力が得られなくなってしまいます。そうなると小学校にあがっても黒板の文字が読めない、一斉授業が受けれないなどの大きな障害を抱えてしまうことになります。そういう可能性を持った子供が、日本には25人に1人、存在するのです。
これは驚くほど高い確率です。にもかかわらずこのことはあまり広く認知されてはいません。
国や当局、医師や、保育機関などが連携してもっと啓蒙すべきだと考えます。
- 子どもの診察や治療にチカラを入れるようになったきっかけは
他にもあります。
- 実は、私の末の男の子(そういち)が発達障害をかかえているのです。特徴としては感情起伏が激しく、情緒不安定だったり、皮膚感覚などがとても敏感ですぐに驚いたりします。赤ちゃんや幼い幼児の反応にとても似ているかもしれません。そのため一般的なお子様のように授業を受けたり、病院へ通ったりするためには手順が必要です。授業に関しては発達障害の子供に対しても理解のある特別支援学校に通うことで問題はほとんど起きなくなりました。
しかし、通院などは非常に困っているのが現状です。例えば歯医者さんに行って
「では、口を大きく開けて」とか言われながら、歯科医師の手が口の中に入ってこようものなら恐怖のあまり飛び上がって逃げ出してしまいます。そうなると、「もう行かない!」と言って、二度と通おうとはしませんし、無理に連れて行っても泣き叫んで診察をすることはできません。
- このようなことを何度も経験する中で、
ある歯科の先生は全く対応が違いました。
- 「時間をかけて、ゆっくり慣れましょう」
そう言われながら、待合室にあるキッズスペースまで出てきて、子供と触れ合いながら、ぬいぐるみに歯ブラシをあて、いっしょにママごとをはじめます。
次の診察の時には、そういちに歯ブラシを渡して、「そうちゃんも歯をキレイに磨いてしてみようか?」と、“口のなかにモノを入れる経験”に進めます。三回目の診察のときに初めて診察室に入りました。そこでも工夫がありました。椅子が丸椅子ではないのです。通常、病院では患者さんは身動きのとりやすい丸椅子が基本です。しかし、その先生が言われるには「発達障害の子は、背もたれがある椅子じゃないと落ち着いて座ることができないんですよ。」とのこと。
安心・安全であるということを、身をもって体験しながら少しずつ進めていけば通院は怖いことではなくなるのです。そういちも、今では歯の治療を平気で受けれます。ガリガリと削るあの治療です。
眼からうろこが落ちた私は、当医院の治療にもこの考え方を参考にすることにしました。
もちろん、緊急を要することが多い眼科は、歯科とまったく同じように進めるのは難しい面もありました。
それでも治療を怖がる幼児はもちろん、発達障害のお子様だとしても安心して通える眼科づくりは、
大変意義のあること。もちろん、そのために勉強もしました。看護師や検査技師、すべてのスタッフへ教育を再徹底しました。「子どもがいやがるから困った」と、通院がおっくうになっているお父様、お母様。安心して、みなとクリニック(旧みなと眼科クリニック)へお越し下さい。いっしょに大事なお子様の眼の問題を解決していきましょう。
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